Let it Ride

19/20
2270人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
抱きしめた腕はまだ離せない。 「……なんか、めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど」 昔と変わらない、陽の甘い香りで、あたしは心の中まで満たされていく。 不意に彼が、あたしに腕を絡めたままの姿勢で囁いた。 「……大丈夫。恥ずかしがる暇なんてないくらい、俺に夢中にさせるから」 あたしは、初めて出逢ったあの日から。 ……ずっと陽に夢中だよ。 古臭い看板と、軒下のベンチのあるあの店で。 君と出逢って、初めて本気の恋をした。 Let it Ride。 全てはここから始まった。 ……客の目を盗んで。 カウンターの影に身を潜めて。 忘れかけた記憶を呼び覚まして。 離れていた心に再び火を点して。 そして、あたし達は。 甘く、優しい口づけを交わした…… .
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!