2270人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
抱きしめた腕はまだ離せない。
「……なんか、めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど」
昔と変わらない、陽の甘い香りで、あたしは心の中まで満たされていく。
不意に彼が、あたしに腕を絡めたままの姿勢で囁いた。
「……大丈夫。恥ずかしがる暇なんてないくらい、俺に夢中にさせるから」
あたしは、初めて出逢ったあの日から。
……ずっと陽に夢中だよ。
古臭い看板と、軒下のベンチのあるあの店で。
君と出逢って、初めて本気の恋をした。
Let it Ride。
全てはここから始まった。
……客の目を盗んで。
カウンターの影に身を潜めて。
忘れかけた記憶を呼び覚まして。
離れていた心に再び火を点して。
そして、あたし達は。
甘く、優しい口づけを交わした……
.
最初のコメントを投稿しよう!