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「確かに受理致しました、おめでとうございます」
受付の職員が、笑顔であたし達を見送る。
たった紙きれ一枚が、皆を笑顔にさせるような気がした。
「じゃ、美沙、行こうっ」
陽に手を取られて、急ぎ足で役所を後にする。
いつもと変わらない陽と、いつもと変わらないあたし。
だけど今日、陽と同じ苗字になった。
それだけでほんの少し、世界が変わる。
「……出しちゃったな」
「何か緊張しちゃったー」
二人、顔を見合わせて笑いながら長い長い遊歩道を歩く。
街路樹から零れる木漏れ日さえも、今日はやけに優しい。
「……美沙、でも本当に良かったの?」
不意に立ち止まった陽が、真顔であたしに語りかけた。
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