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「……じゃあ、あたし仕事行くね」
「ん。俺も用事済んだら店に顔出すから」
「うん。待ってる」
余韻に浸る時間もなく、あっという間に訪れた日常。
あたし達の街、昔から変わらない古びたアーケードの入り口で、彼の車を降りた。
通りを入って、一際大きなオブジェのある広場を越えるとすぐ目に飛び込んでくる、あたしの働く店。
“Let it Ride”
大きな看板と、軒下の真っ赤なベンチが目印。
昼間はこじんまりした古着屋だけれど、夜の帳が降りる頃には、小さなこ洒落たBARになる。
「……シンさーん、お疲れさまでーす」
“準備中”の看板を潜り照明の落ちた店内へと入ると、出迎えてくれたいつもの笑顔。
この店の店長、そしてあたしの雇い主でもあるシンさん。
「おー、美沙お疲れー、悪いな」
「いいよ、気にしないで」
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