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理香子ちゃんの言葉に軽くひきながら、ドアに近付く。
王子様、って。
じゃあお姫様はあたし?
そんな訳ないじゃん。
鏡のない狭い部屋の中、今自分がどんな格好なのかもよく解らない。
とにかく派手に着飾られている事だけは確かだけど、どうしてあたしが。
ドアノブに手を掛けようとしたその時、あたしが開けるよりも早くゆっくりとドアが開いて。
深いグレーのスーツを身に纏った、陽の姿が現れた。
「……陽?」
「美沙。迎えに来たよ」
出勤スーツの陽の姿は見慣れているはずなのに、いつもと違う雰囲気がやけに妖艶で、目が離せなくなる。
綺麗にセットされた前髪から覗く瞳が細められ、彼はあたしに甘い笑顔を向けた。
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