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「陽、ありがとう……嬉しい」
素直に口にすると、彼は照れたようにあたしの髪に顔を埋めた。
そんなところも愛しくて仕方ないの。
だから……今日だけは陽のサプライズに騙されてあげる。
「早く行かないとね。皆待ってるよね」
意を決してフィッティングルームのカーテンを開こうとした瞬間、後ろから更に強く抱き締められて。
「やっぱりごめん、もうちょっとだけ……美沙を独り占め、したい」
優しくて甘いキスが落ちてきた。
「……折角、理香子ちゃんが綺麗にメイクしてくれたのに」
「本当は髪だってぐしゃぐしゃにしたいくらい」
「陽の焼きもちやき……」
「当たり前、……」
カーテンの外は主役を待つホールのざわめき。
触れそうな距離で揺れる吐息。
熱く絡み合う指先と、想いを伝え合う口唇。
もう絶対に、この手を離したりしない……
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