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1 ~君に会いに~
ローカル路線ならではの線路に共鳴した音。
それと共に景色がエンドロールの様にゆるりと時間と紡ぎ合う。
「ねぇパパー、海はお空と同じくらい青いんだねぇ。」
幼い少女は窓にへばり付きパノラマに拡がる海に釘付けだ。
驚いた表情の横顔から白い歯と海色に染まった大きな青い瞳が伺える。
「そうだね、青い空と青い海に包まれてママはゆーっくりお休みしてるんだよ。」
僕は優しく娘に語りかけた。
「そっかぁ。じゃあママ独りぼっちでも毎日素敵な景色見てるから平気だね。」
「あぁ…でも時々はママに会いに行かないとママだってメグに会いたいよぉって、淋しい気持ちになってる筈だよ。」
…ねぇ恵<・>、そうでしょ?
「そっかぁ、わかった、じゃあメグ、ママに綺麗なおーっきなお花飾ってあげるね。」
娘は無邪気な顔で僕に笑いかけた。
電車の速度が落ち、キィーっというブレーキ音が駅への到着を僕達に知らせた。
僕は席を立ち娘の手を握り電車の出口へと向かう。
「よぉし、じゃあママにこんなにおーっきなお花いーっぱい飾ってあげような。」
僕は歩きながら大きく手を広げ、空想の大きな花を娘に見せつけた。
君のお墓に向かいますね。
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