一項

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そういえば、もうそろそろ蒸し暑い温暖期がやってきますね。 温暖期と繁殖期が近いのは、ご存知ですか? 繁殖期に向け多種多様なモンスターが栄養を溢れんばかりに蓄える時期でもあります。 まぁ温暖期といえば、ハンターにとっても民にとっても一番厄介なのは……。 ムシ……ですな……。 あの密林の空一面をドス黒く覆うかの如く無数に、羽音を鳴らせる羽虫。 歩く場所さえも、奪われる一本角を携えた甲虫。 一見ただの邪魔者にしか見られないこの両者。 がしかし、この厄介者兄弟から採れる素材はとっても稀少価値が高いのです! 何故なら。 形を崩さずに素材を剥ぎ取るのが、かなりの難易を要するのです。 虫駆除専門を生業とするハンターは毒耐性の高いイーオスの防具に身を包み武器を、ほとんど扱わず毒テングダケというキノコの粉末を素材玉に仕込みそれを、投げつけ毒殺する。 無論。毒殺故に形等は一切崩れない。 そんな原形を留めたまま死んだ虫達が無数に地面に転がっているのですが……。 物好きな輩もいるもんですねー。 えぇ、彼は電怪竜フルフルの尻尾やダイミョウザザミの眼球など、ほとんど素材の価値はない珍品に目をつける中々マニアックな人でしてその人は工房の関係者と縁がありましてね。 ですが彼のお陰ですよ……。世に無類の切れ味を誇る、あの一振りが出回ったのは……。  
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