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レイは先程の感覚を思い出しながら、自身の空いた手の掌を見詰める。
自身に宿る焦燥感と危機感に、微かに眉を寄せた。
そして再び視線を魔剣に戻す。
「…あの日からさ…“概念のチカラ”を使ったあの日から……俺たまに、一瞬自分が誰だか忘れるんだ。」
〔……。〕
「だからさ…俺がもし自分を思い出せなくなったら……イリアやエル達のこと、助けられる様に師匠が導いてよ…。」
悲痛な表情を浮かべ、魔剣を強く握り締め、視線を下げる。
そして剣を握る右手の震えを抑える様に左手を添えた。
その時、僅かに魔剣の刃が淡く光る。
それに気付き、レイはゆっくりと視線を魔剣に戻した。
〔…大丈夫、お前が“概念のチカラ”に頼らなければ…これ以上悪化することは無いはずだ。〕
「……そう、かな?うん…分かった。」
―――でも、もしエル達に何かあったなら…
その時はきっと…そう強く心に決めて、レイは表情を引き締める。
その眼には先程までの弱弱しさなど無かったかの様に、強い光を宿していた。
「じゃ、俺戻るよ!師匠も休んでて!!」
〔あぁ…〕
次の瞬間、魔剣は淡く光りだす。
そして全てが光に包まれると、光の粒子になり空気中に消えていった。
レイはそれを確認して、ゆっくりとトイレを出る。
すると、イリア達の座る席の周りを数人の男が囲んでいた。
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