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交わった真衣の瞳が潤んでいる。
語尾が微かに震えている。
今までに見たことのない真衣の姿に思わず息を呑んだ。
1つ小さく息を吐き、高まる感情が収まるのを確認すると、またぽつりと話を始めた。
「それだけじゃないの。最近の要君は、何だか私のことを鬱陶しいと思ってるみたいなの」
「そんなこと、どうして分かるのさ?」
「私と話す時、何だか上の空なの。話しかけても、答えが返ってくるまで時間がかかるし……」
真衣は涙を拭い、背筋を伸ばして私を見た。
赤い目が向けられる。
私もつられて、背筋を伸ばした。緊迫した空気が辺り一面を支配する。
「だからね、要君は私に何か内緒にしてることがあるんじゃないかって思ったの」
「それって具体的には分かること?」
1度だけ真衣は小さく頷くと視線を落とした。
言おうか迷っているのだ。
だけど、直ぐに視線を戻した。
「……可能性として一番高いのは、要君が別の女と付き合ってるんじゃないかってこと」
「冗談でしょ?」と訊きたかったが、それが言葉として口から出ることはなかった。
それだけ、真衣が真剣な瞳で見ていたから。
「だから、1ヶ月観察して欲しいの。はっきりとした理由が知りたいの」
「もし、本当にそうだとしたら……?」
恐る恐る訊くと、真衣は苦笑いのような笑みを浮かべた。
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