・プロローグ・

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あまり夜道を歩かない為に 通い慣れた道が違う道に思える。 初めて訪れた場所に来た様に きょろきょろ周囲を見ながら歩く、やがて 住み慣れた家が見えてくる。 だが 電気が付いていない事に首を傾げる。 携帯を取り出して、時間を確認する。 ディスプレイに七時四六分の文字 すでに両親は帰っていてもおかしくない時間。 「残業だったのかな?」 両親は共に同じ会社に働いている為 父の帰りが遅くなれば、同時に母の帰りも遅くなる。 バックから鍵を取り出し、鍵穴に差し込み捻る。 だが ロックを解除する感触を得られない。 鍵を鍵穴に刺したまま、扉を引っ張る。 玄関は何の抵抗も無く開いた。 鍵が開いている、だが電気が付いていない。 学校に残った事 黒い手紙 両親が帰っていない 鍵が開いている。 何もかもがおかしい 恐怖を感じながら、真実を確かめる為、自宅の中に入る。 まるで他人の家に無断で入っている様に足音を殺して居間へ。 扉の横に設置された電気のスイッチを押す パチとスイッチが切り変わる音が響き、電気が数回点灯を繰り返して光が満ちる。 光が闇を追いやり 真実が明らかになる。 闇が無くなる事が 幸せな事だとは限らない それを、俺はこの時初めて知った。 「父さん、母さん」 床は紅いカーペットを敷かれた様に紅く染まり、両親は血の海に沈んでいた。 「美味しかったですよ?久方ぶりの餌は」 背後から聞こえる声に振り返る事もしなかった。 「君も食べてあげましょう」 くちゃりと気持ち悪い音が聞こえ、首に鋭い痛みが広がる。 なぜ、この吸血鬼は俺を殺さず、生かしたのだろうか? 御蔭で、俺と言う化け物が生まれてしまったではないか。
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