おっちゃん。

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   ―急ブレーキです、気をつけて下さい 「あああっやかましいいいっ!!一緒に走ってんのに寝てねーのが解らんかこのポンコツが!だまっとけ!!」  大雨、洪水警報がもう三日続いている。田舎の高速道路は当然、早々に通行止め。仕事は思い通りに進まず予定時間を大幅に過ぎて終了、苛立ちと寝不足もピーク。寧ろ機械にブチ切れる程にハイテンションになる俺。そして虚しく響く叫び声。これは酷い。  通行止めを避ける為に国道を通るも案の定渋滞中。もう朝、か。仕事は終わったのだがこれでは帰ることも出来ない。寧ろ帰って寝たら確実に寝過ごす。昼過ぎからまた仕事だ。家まで帰れば昼になる。  …コンビニにでも寄って、酒買って今日はトラックで寝るか。  家に帰らないと決めたら行動は早い。後はもうコンビニに俺様駐車。四トントラックが乗用車かの如く迷惑に横付け。まあ、いいだろ。一瞬一瞬。  朝、といってもまだ人気の少ない店内で意気揚々と買い物を済ませ、コンビニを出る。も。違和感を感じた。先程にはなかった風景。国道、コンビニ、駐車場、トラック、トラックの前に黒い塊。  なんだ、これ。 「…うえっ!?」  人だ。  人ってか、ガキ?雨が強すぎて一瞬何だか解らなかったが、近寄れば一目瞭然だ。こんな時間に、こんなところに子供。  これはまずい。明らかにまずい。ガキは嫌いだけど放っておく訳にもいかない。それも、こんな雨の中。 「おい、お前大丈夫か?」 「――」 「おい!」 「――ぁ」 「起きたな」  そのガキはゆっくりと顔を上げた。歳は、恐らく十代前半。艶のあるセミショートくらいの黒髪が雨に濡れて頬に張り付いていた。幼さの残る顔立ちはそれでも端正なものでありその真っ黒で大きな瞳に少しばかり動揺した。  何つーか…薄気味悪いガキだな。 「ガキがこんな時間に何してんだよ」 「…何って、家出」 「風邪引くぞ。家出なら余所に行け。それか晴れた日に出直してこい。俺のトラックの前でうずくまるな」  家出少年ってか。益々関わりたくねえ。手に持っていた傘をガキの肩に乗せ、俺はトラックに乗り込んだ。  さあ、後は飯食って呑んで寝るだけ。ってとこで、助手席側のドアが開いた。  …何のつもりだ、クソガキ。  
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