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学校からの帰り道、急にトイレに行きたくなった俺は仕方なく人気のない公園に寄った。
「……やっべー、限界限界ッ!!」
適当にカバンをベンチの上に放り投げて公衆トイレに走る。
「……ふぅ~、あっぶねぇ~!!
いやぁー、ギリだったなー!」
心地好い解放感に包まれながら、髪型をチェックし、手を洗って公衆トイレを出る。
……困った。
俺が放り投げたカバンの上で、女子高生くらいの女の子がめちゃめちゃ泣いている。
「……いやぁー、どうしたもんかなぁー?」
とりあえずどんどん近付いてるけど、全く気付かれない。
仕方ない、少し気が引けるけど話し掛けるか。
「……あの~、そこの泣き虫ちゃん?
それ、俺のカバンなんだけどなぁ~?」
「……ぐすッ…ふぇ?」
目が合った。
結構可愛い。
だが、一瞬こっちを見ただけでまた泣きはじめる。
「……聞いてる?」
思いっきり無視。
さては、ナンパか何かだと思いやがったな?
「……うーん…どうすっかなぁ~?」
ただ少しどけて欲しいと言えば良い話なんだが、この状況ではそれがなかなか言えない。
「………ぐすッ…ぐすッ……もう、何ですか?」
しまいには、いきなり嫌悪感を全面に出してきた。
「…だ~か~ら~!
あのね泣き虫ちゃん?
泣いてるのは別に良いんだけど、ずっと俺のカバン踏んでるんだよね~?」
「………え?」
ようやく状況を理解してもらえたらしい。
女の子は急に立ち上がって、尻の下にあったクシャっと潰れた俺のカバンを見て驚いていた。
「………あ…。」
「…そーゆーことッ!…よいしょっと!!
これを返してもらえたし、ちゃんと居なくなるから安心してッ。」
俺はカバンをベンチから取って肩に掛けると、方向を変えて歩き始めた。
何だかカバンが温かかった。
「……あのッ!
…ごめんなさいッ!!」
謝ってるのが聞こえた。
まぁ、俺は全然気にしてない。
泣いてたんだしそれどころじゃないだろ。
「…あー、良いって良いって!
泣いてるとこ邪魔しちゃ悪かったね、泣き虫ちゃん。
……あっ、そうそう。
泣いてるのは良いけど、こんな所に居ないでちゃんと家に帰ってから泣きな。
世の中、頭おかしい男が多いからさ~。
んじゃな~、泣き虫ちゃん!」
なんてキザな事を言って俺は去った。
「…それにしても可愛かったなぁ…。」
これが俺と彼女の出会いだった。
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