とある家庭の事情

織武朔の劣等感

度々運動がてらに紅葉と庭で武術の稽古はしているが、久しぶりに刀を思う存分振れるのは気分の良いものだ。

俺たちの生まれ育った国では、生きる為に強くならねばならなかった。
生死をかけた戦いを繰り返してきた俺と紅葉は、当然のように決勝戦で戦うこととなった。

「朔。やっぱり俺は白蓮が好きだ。」

「ああ。分かっている。」

昔、紅葉に稽古をつけていたときは全然俺に適わなかったはずが、いつの間にかなかなか良い槍の使い方をするようになっている。

俺に勝ちたい一心で自主練習をしているのだろうな。

でも俺も負けるわけにはいかない。

紅葉、悪いな。
相手が誰であろうと白蓮様は渡せないんだ。

掴んだ幸せをむざむざ放せるはずが無い。

優勝したのは俺だった。