52人が本棚に入れています
本棚に追加
雨の中、ボロボロのヒトならざるモノが一人の青年に覆い被さっていた。
辺りには霧が立ち込め、灰色のねっとりとした空気が肌を濡らす。
『……負けてしまいましたね。すみません』
その声と同時に、頭を撫でる感触。固くごつごつとした、優しい手。
機械的な白い翼を持つそのヒトではないモノは、にこりと笑う。それは、自然な笑み。
「嫌だ、別れたくない……! 俺が……俺のせいでっ!!」
響くのは、終わりの声。
【プレイヤーID 175、ランクEにダウン】
青年の声は霧に阻まれて響かない。そんな声が届かないように、白い翼のヒトならざるモノは消えていった。
響くのは慟哭。それは霧の中に消えていく。
植え付けられたのは、恐怖と虚しさだけだった。
最初のコメントを投稿しよう!