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「へへへ、大変だったね、かなでちゃん」
なんて声をかけてくれるのは数少ない中学からの同級生「さくら」だ。ウェーブがかかった髪と薄い色素が特徴的だ、一番のチャームポイントは、そのさくらみたいなかわいらしい唇だ。
結局HRでは、かなでが女子の部屋にホントに泊まるなんてことはなかった。
個室が用意されているらしいが、ほんとにそれほどまでに神経質になることなのだろうか。
放課後、僕はさくらと一緒に家に家に帰るのが習慣になっている。家が隣ということ、小さい頃からよく遊んだこと、もう習慣みたいにずっと一緒に登下校していた。
ただ、さくらはあまり僕の家で遊んだりはしなかった。それには僕とさくらのとある秘密があるのだが……。
でも、今日は珍しく僕の部屋まで上がっていた。
「かなでちゃんの部屋って久しぶりね。ねぇねぇ、エロ本とか探していい?」
僕がさくらに頭が上がらない理由
その1 性格的に強引なさくらついていけない。
その2 小さい頃からの刷り込みで生物として抵抗できない。
「そんなもんないよ!」
僕が言うのも聞かず、さくらはごそごそする。 こうなったらさくらが言うことを聞かないのはいやというほどよく知っている。
やめさせるにはさくらが新たに関心を持つ何かを示さないといけない。
正直僕はある一点においてだけ、さくらに対して優位に立てるポイントがある。
今日さくらが家に来たのだってそれが目的になっているのだから早く済まして帰ってもらうのが無難だろう。
つかつかと、僕は無言で歩み寄ってさくらの耳元でそっと言った。
「ねぇ、あれするんでしょ?」
さくらがごくりと唾を飲むのがわかった。
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