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「かなでちゃん、か~わい~よ~」
僕は妙にフリフリの服を着せられている。
これが僕とさくらの秘密、僕は昔からさくらの着せ替え人形だ。
僕らが室内で遊ぶ時は大体これ、自分の部屋にしか服はないし、僕の家ではなにかと邪魔が入るから。というのがさくらが僕の家に来たがらない理由だ。
さくらが僕に女の子の格好をさせたがるには理由がある。さくらは子供の頃僕をずっとを女の子だと思っていたらしい。
というのも両親がなぜか僕に女の子の格好をさせていたからだ。僕がさすがに男というアイデンティティーを獲得し、男の子らしい格好をしだしてからも、時々こうやってさくらにつきあい、彼女秘蔵の洋服を着て童心に戻り遊ぶのだ。
僕もこのときだけはさくらを昔の呼び方で呼ぶ。
「グゥヘヘェ、かなでちゃん、かわいいよ。かわいいよ、かなでちゃん。」
呪文のように、口ずさみながら完全に逝っている目でさくらは僕に近づいてくる。最近このときのさくらはちょっと怖い。
この前は突然「おもちかえりぃぃぃいいぃ」というなぞの奇声を上げて近寄ってきたときは思わず、手元にあった金属バットに手が延びてしまっていた。
じりじりと後退してついにドアまで追い詰められてしまう。僕はドアもたれ掛かってその場に座り込んでしまった。
さくらは僕の膝をしっかりと自分の脚でホールドしつつ、マウントポジションのまま僕の肩をしっかりと抑え込んだ。
もう逃げ場がない。
しかし僕の背中を支えていたドアが急になくなった、僕は逃げ出すことができた代わりに、頭を床にぶつけること以外にできることはなかった。
「あ…あんたなにしてんのよっ!」
そこにあったのはグリーンのシマシマパンツ
を履いた妹だった。
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