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井本が後輩と飲みに行くなんて
いつものことやのに
何故か寂しくなって
気付けば目から水が溢れている。
…なんで泣いてんねん
「…いのもと あいたい」
本格的に悲しくなってきて
やはり電話してやろうと携帯を持った瞬間
……!
井本から着信?
「もしも…
『玄関開けろ!早よせぇ!』
思わず携帯から耳を遠ざけた
そして 玄関を蹴りつける音と携帯から聞こえる音と同じ怒鳴り声
まさか!
急いで玄関を開けると
ずぶ濡れの井本が立っていて
俺はいよいよ涙が止まらない
そんな俺の様子に驚いた井本が
濡れた服のまま抱き締めてくる
えぐえぐとしゃくりあげながら
「な んで?後輩と飲んで たんちゃ うの? 俺 なんかと 会うて も 楽 しくないん やろ?」
「はぁ? 何言うてん?…お前また思い込みしたんか」
「…ちゃうの?」
「ちゃうわボケ…お前にしか会いたくないわ …お前にしか」
「ほ んま?」
「ほんま」
「ぎゅっ てして?」
井本が俺の体を強く抱き締める。
凍てついた心が溶けるように暖かくなる
「会いたかった」
「俺も」
「…俺の所為で濡れてもうたな、着替え…」
体を離そうとした井本の服をぎゅっと掴んだ
「いらんから… もう少しこのまま抱いていて…」
今はこの幸福感に浸りたいの
END
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