約束

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――――― 「任務完了だ。意外にチョロかったな」 署長室の扉を開け、入ると同時に束はそう言い放つ。 彼の顔付きは、どこか変わっていた。 ギラギラとした見る者を睨み殺すような狂犬を思わせる視線はなく、言葉使いも、いくらか丁寧になっている。 「ご苦労だったな。それで、次の任務だが・・・」 三日ほど前に怪我から復帰したバースはファイルをめくり、束に新たな指令を下す。 彼が最も変わったのは、任務で人を殺さなくなったということ。 どんなに危険な犯罪者に対しても、漆黒の球体で消し去ることをしなくなった。 バースは彼の心にできた大きな傷を、決して触れないようにする為にある提案をした。 ジョージ・バンデラス ニーナ・バンデラス この二人を死に追いやってしまった二ヶ月前の事件を、永久に抹消することにした。 事件の内容や書類、記録の全てを焼却し、それに関わった人間、全員に口止めをした。 無論、応じない者など誰もいない。 この悲しみに包まれた事件は、決して語られることのない、闇の彼方へと消えていったのだ。 「時に空良、監獄の完成は間近に迫っている。そっちを手伝ってくれないか?」 「何をするんで?」 「私とフェルガスは、監獄が完成し次第そちらに勤務する。署長の座をバーナードへ譲り、囚人の管理をするつもりだ」 「初耳ですね。まぁいいんじゃないですか?」 「えらく反応が薄いな・・・もう少し驚くと思ったんだが」 バースは微笑し、ファイルを机の引き出しにしまった。
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