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――――
あの哀しい事件から、長い年月が経った。
その間、監獄が完成。
バース、フェルガスは所属をそちらに移し、署長はバーナードが務めることとなる。
捜査官の数も増え、世間に潜む能力者の取り締まりは、例年より順調に進んでいた。
そんなある日、束は数々の犯罪者が収容されている監獄へ足を踏み入れていた。
今回の任務は、これから護送されてくる犯罪者の取り調べ。
バースから、ぜひ束にもこの仕事をして欲しいとオファーが来た。
今の束は、SCHの中でもリーダー的存在。
ゼル・タイトマンという、新たな相棒とコンビを組み、多くの犯罪者を捕まえてきた。
そして“息抜き?”ということで、この任務を受諾した束は、薄暗い一室にて護送されてくる犯罪者を待っている。
バースからの報告によれば、あと10分程度で到着するそうだ。
――一方
大通りを進む、巨大な護送車。
その薄暗い車内には、数人の能力犯罪者が乗せられている。
皆が絶望の表情を浮かべる中で一人、笑みを見せる男が、一番奥の席に足を組んで座っていた。
車内は薄暗い為、顔は確認できない。
だが時折、閉まっているブラインドの隙間から射し込む光が、一瞬だけ男の姿を映し出した。
真紅に輝く、血の色をした長い髪。
そして、細目の奥に潜むのは、同じ色をした真紅の瞳。
男は護送車の中で揺られながら、思考を回転させ、監獄への到着を心から待ち望んでいた。
了
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