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「ネティもニアトノームからよくこんな遠くまで来たね! けっこうかかったでしょ。え、ひょっとしてあたしを追いかけて? もうやっだぁ~照れちゃう~♥」
自分で話を振っておきながら、自分で答を作って照れている。会話の速さについていけている者はいなかった。
「えっと、ファルセットさんも、ニアトノーム出身なんですか?」
「ファルでいいわよぅ。あとそんなかしこまらないで普通にしゃべって」
なんとか会話の糸口を見つけたエルガーツに、にこっと笑ってファルセットが答える。
笑顔を作る度に細められる目の上で、長い睫毛が羽根のようにふわりと揺れた。
「あ、じゃあ、ファル」
急にぐっと親しくなったようで、エルガーツは口元がにやけそうになった。殆ど死に体のネトシルに代わって、エルガーツが会話を担っている。
そもそもからネトシルはあまり話さないのだが。
「ええ、あたしもニアトノームの山奥出身。ネトシルとはちっちゃい時からの付き合いなの」
「ちっちゃい時? え、ネトシルとは年離れてるのか?」
「んふふ、どう見える?」
エルガーツの驚いた顔に、ファルセットは悪戯っぽく笑う。
「え、そりゃ、ファルの方が大分下に見えるけど」
と、答えながら、そういえばネトシルの歳を聞いた事がなかったな、と思い返した。
「それがね、」
ファルセットが口の横に手を当てて手招きする。
「実は……」
囁き声の吐息が耳朶を撫でる。
と、丁度その時、どこか遠くから女の悲鳴が響いて来て、反対側の耳を劈いた。
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