潮風の街に集え

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 それを聞くや否や、机に臥していたネトシルががばりと身を起こし、店から飛び出した。 死んだ魚のようだった眼に光が戻っている。 「え、ちょ、ネトシル!?」  泡を食ってエルガーツもそれを追う。 「何、あたし置いてけぼりなの? おじさん、ごちそうさまでした! もう、待ってよぉ!」  口をとがらせ頬を膨らませて立ち上がり、ファルセットも後に続く。長いスカートは走りにくいので、裾をたくし上げて走った。  店内に残ったまばらな客と店長の眼に、ファルセットの白い腿が焼きついた。
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