潮風の街に集え

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「そういえば、結局ネティがぐったりしてて訊けなかったんだけど」 「何?」  綺麗な細工の杯に注がれた橙色の酒をアヴィドから受け取りながら、ファルセットが尋ねる。爽やかな果実の香りが、ふわりと漂った。 「何でニアトノームからこんな所まで? って、エルきゅんはニアトノーム出身じゃないっけ。どこ出身? どこで一緒になったの? 何で一緒にいるの? もしかしラ♥ヴ?」 「えっとえっと」  身を乗り出しながら手でハートマークを作る歌姫は、とてもさっきまでそこで切々と歌っていた人間と同じとは思えなかった。 一度に大量の質問をぶつけられ、エルガーツは狼狽する。 「ねね、どーなのそこんとこぉ」 「とりあえずそれはないと思う、お互いに」 「えぇー何でよぅ」 「何でって……その、単にオレはネトシルに協力してるだけで、そもそも、幼馴染の人の前でこんな事言うのもなんだけど、あんまり同じ種族として見てないっていうか」 「何それ、ひっどぉい」  とは言いながらも、ファルセットはけらけらと笑った。
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