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「うぅぅ……」
顔をしかめ、低い唸り声を洩らしている。時折、鼻に布を当てていた。
山育ちのネトシルは、潮の香りに慣れないらしい。
エルガーツは以前傭兵仕事の拠点をここにしていたのもあり、平気な様子で歩いていた。
「大丈夫か?」
「……そのうち慣れる」
眉を寄せたまま答える。
街の中心に行くにつれて、市場から他の匂いも流れてきた。花売りの売る鮮やかな花々、目立つ色や形の果物、異国の香辛料。
だんだんとネトシルの鼻も慣れてきたようで、歩みも以前の速さが戻って来た。
しかし、そんなネトシルの状態を戻してしまうどころか悪化させる事態が、やがて起こることになる。
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