1人が本棚に入れています
本棚に追加
賑やかな通りに入ろうとした丁度その時、
「ネトシル!? ネトシルじゃない!」
横合いから声がかかった。
見れば、果物籠を抱えた娘が、こちらに走り寄ってくる所だった。
一方、声をかけられたネトシルは怪訝そうな顔をしていた。
「やっだぁ、お久しぶり!」
やってきた娘は果物籠をごく自然な動作で隣のエルガーツに預けると、ネトシルにぎゅっと抱きついた。
娘は目を瞠るばかりの美人だった。
ゆるく巻いた金髪は、エルガーツの麦藁色とは違い、輝く蜜の如く艶めいている。
肌は白く、円らな瞳は澄んで青い。
縁取る睫毛は金の扇のようで、唇は果実にも似て瑞々しく、そこから零れる声は小鳥のさえずりを思い出させる。
そのように少女らしい様子でありながら、目蓋を薄青に塗り、肌を白く見せるための花形の付け黒子が頬に散っている。
髪飾りは透明な玉がいくつも嵌まった、金物細工の派手なものだ。
纏ったドレスは裾に布をたっぷりと使った贅沢なものである。
そうでありながら、背は大きくあき、胸のふくらみを強調するように、胸の下で革のリボンが結ばれていた。
娘はネトシルの頬に親愛のキスの雨を降らせていたが、ネトシルはそんな娘の肩を掴んで勢いよく引き剥がした。
何故か肩を掴んだ拳が震え、顔面は蒼白である。
最初のコメントを投稿しよう!