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「市場のことなら任せてよ! おすすめのお店かたっぱしから教えてあげるね!」
そう言って、ファルセットに連れてこられた店は、色々あって昼過ぎになった事もあり空いていた。
「あたしはおう食べたから」とファルセットが言いながら、この店の名物を二人におごってくれた。
淡白な味の家禽の肉を炙って薄く切り、平たい丸型に焼いた生地に千切りの茹で野菜と共に挟んだもので、しっかりとした量があった。
野菜に交じって入っている、炒って砕いた豆が香ばしさとかりっとした食感を添えている。
豊富な香辛料と果物の酸味の効いたソースは、確かに絶品だった。
が、ネトシルのいつもの食欲はなりをひそめていた。
「あっれー? ネティってばしばらく会わない内に小食になったの? 前みたいに「三個目からは自分で払って」って言うの楽しみにしてたのにぃ」
「今はそんな気分じゃない……」
「おや、ファルセットちゃんのお友達さん、美味しくなかったかい?」
忙しい時間を過ぎて暇になった店主が、厨房からひょっこり顔を出した。
ネトシルは「そういう訳じゃ……」と口にはしたが、声量が足りず店主に届かなかった。
店主の顔が少し曇る。
「いや、美味しかったですよ! 田舎出身なんで珍しい味でした!」
エルガーツが慌ててフォローを入れる。途端店主は気を良くして、「遠くから大変だったねぇ、港街を楽しんでいきな」と言いながらソースに使う果物の皮の砂糖漬けをおまけに出してくれた。
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