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「なんで?」
出来ればこの話はしたくなかったんだけど、
「母親が入院したんだ」
小さい頃に離婚して女手一つで育ててきた母親が肺を煩わせたのは、去年の初春の話。
しかも、誕生日になんてホントついてないよな。お祝いのケーキを持って実家に戻ってみると倒れてたんだもの。
もし俺が帰って来なかったら一人で誰にも気付かれず死んでたのかもしれない。
そう考えると誕生日だったのはせめてもの救いかも。
「うち、貧乏でさ、俺を大学に行かせて自立させるために自分は保険な入ってなくて、いざ入院してみると途方もない数字が並んでた」
手術代ってどうしてこう規格外なんだろうか。
「手術すれば治るって言われたんだけど、到底払えるわけなくてさ……」
そして今に至るという訳だ。
気がつけば当然空気は重くなっており、春美ですら手を止めていた。
鍋の煮えたぎる音だけがこの空間を包む。
「………なんかごめんね」
春美が謝る必要なんてない。そう心では思ってるのに口には出せなかった。
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