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俺はハンドルを片手に煙草を吹かしていた。
肺の奥まで吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
それでもまったく気分は落ち着かなかった。
さっきから俺の足はエンジンと共に車を揺らしている。
そしてもう一つ要因があった。
猿轡に目隠し、それき手首足首をガムテープでぐるぐる巻きにされ、横たわった少女たちが 大きく身体をよじっている。
うわっ……パンツ見えてない?
バックミラー越しに少し覗いてみた。
普段出会うとの無い光景に、あぁ、ついに自分はとうとう戻れないところまで来てしまったんだなと思う。
ここまで来るのはそう難しくなかった。目的の姉妹に加え、その友人までいたのは少々予定外だったが、所詮女子中学生の腕力だ。一人分の差はカバー出来からだ。
一瞬。わずか30秒の出来事だった。
計画の段階があったとはいえ、その30秒でついに俺の人生は狂ってしまったのだ。
自分も十分悲惨だとは思うが少女達なんて、まったく関係ないのに俺のいざこざに巻き込まれてたまったもんじゃないだろう。少しは労わってあげてもいいんじゃないかと思った矢先、後部座席にいる仲間が「黙ってろゴラァ!!」と言い、それ以来彼女達からは鼻を啜る音しか聞こえなくなった。
空気が張り詰めているなんてもんじゃない。空気がないように感じた。
いくら吸っても肺に酸素は送られない。煙草の煙だけが肺を埋め尽くすようだった。
早くこの車から降りたいとは思ったが、捕まってしまっては話にならないので、法定速度ギリギリで俺は車を南へと向かわせた。
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