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☆
はだけたスカートからはみ出る生足に伝わったコンクリートの冷たさは、まるでこの現状を映し出しているようだった。
手も足も、視界までもが塞がれ、聴覚だけを頼りに思考を凝らす。
どこからともなく汽笛の音がするということは、海の近く。そして地面が揺れていないとなると港の倉庫なのだろうか?
静寂の中機械的に鳴り響く汽笛の音がしばらく続いた。
「やぁやぁみなさん、気分はどうだい?」
その静寂をぶち壊すような冷酷な声が聞こえた。
それと共に猿轡と目隠しが取られ、声の主が明らかになる。
ひょろっとして細長い、肌も白くて、頬も痩せこけている。栄養が足りてないような身体だが、目だけは活力に満ちている。
しかし表情は笑っているのだが、その目はまったく笑っていない。
「ふんっ! 最っ高の気分ですが何か?」
隣でお姉ちゃんが吐き捨てるように答える。
「ふふっ……そうですか、それは何よりです」
依然として彼は表情を変えず、身体をところどころ破けたソファへ預けた。
「さて、ここまで来て自分の置かれてる状況が分かんないなんてことはないだろうけど、一応説明しておくね」
そして彼からは表面上の微笑をすら無くなり、生気がない無表情でこう告げた。
「君たちは3億円相当の大切な商品だ。今から君たちのお父様の会社、『KATABIRA』に買って頂く」
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