5人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
桃子や。
『なぁにじいちゃま?』
鬼はどうして悪さをしたと思う?
『え~? たのしいから?』
違うんじゃよ、鬼は辛かったんじゃ。
『なんで?』
顔が怖い。体の色が違う。それだけで鬼は人間に小さな島に追い出されてしまったんじゃ。
その島は草も生えないし魚も鳥も寄りつかない、見捨てられた島。鬼は生きるために人間たちから食べ物やお金を盗まないと生きてられなくなったんじゃ。
『なんかかわいそう』
そうじゃな。じゃが、時がたつにつれて過去を忘れた村人は単なる鬼の悪行と決めつけて困り果てていたのじゃった。その時に現れたのが先祖の桃太郎様じゃ。
もちろん桃太郎様もまたそんな鬼たちの事情を知らなかった。じゃが鬼ヶ島で彼らの姿を見てこう思ったんじゃ。
人間と鬼の立場が逆だったら、我々も同じ事をしていたのではないか、と。
『うん、ももこもいっしょのことしてたかもしれない』
桃太郎様は鬼たちをこの島から解放してやりたいという気持ちでいっぱいになった。しかし、鬼たちの悪行は許されない。
そこで桃太郎様は食料や財宝をかけて鬼の長に勝負を挑んだ。結果は桃太郎様の勝利。食料と財宝を村人たちの下に持って帰っていったんじゃ。
『え!? じゃあおにたちはどうなっちゃうの?』
ほっほ、大丈夫。桃太郎様が村に着いたときじゃった。食料と財宝を待ちわびた村人にこう言ったんじゃよ。
食料と財宝を欲しがる鬼とお前たちはどう違う? とな。
村人は驚いた。じゃが事情を説明されると彼らは鬼たちに対して申し訳ない気持ちになった。
こうして鬼との交流が再び実現された。最初はお互い怖がっていたが、ゆっくりゆっくりと仲良くなっていったんじゃ。桃太郎様はその身を橋として鬼たちを解放してくださったんじゃ。
桃子、儂はお前も桃太郎様のように分け隔てない人間になってほしい。そう願ってるぞ。
『うん! ももこがんばるね!』
◇
最初のコメントを投稿しよう!