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私は勢いよく教室を飛び出し、ある教室へと足を運ぶ。
「葉月~!」
そう、幼なじみの西園寺 葉月〔サイオンジ ハヅキ〕が居る3-Aの教室だ。
教室に入るなり、私は一目散に葉月に飛び付く。
「し、紫苑!?ちょ、止まれバカ!!」
葉月は両の手を広げて、なんとか私を受け止めようと試みるが、私の勢いが良すぎたせいで、支えきれず、私が押し倒すような形で、私達の体は一直線に硬い床へと吸い込まれていく。
集まる生徒の視線。
僅か数秒のはずなのに、倒れるまでの時間が、まるで魔法でも掛けられたかのように、長く感じる。
それでも事の終わりというのはやってくるものだ。
私は来るべき衝撃に身構える。
――ドサァッ――
石の床に叩きつけられた私達の体。
しかし、葉月を押し倒すように倒れたのが、幸をそうしてか、私自身に、痛みは全くない。
でも葉月は……
「痛ったあ~…急に飛びついてくるなよバカ…」
頭を押さえて痛がる葉月。
罪悪感が沸いてくる。
でも…
「葉月に早く会いたかったんだもん…」
葉月と一緒に居られる時間だけが私に安らぎを与えてくれる。
だから葉月に早く会いたかった。
「――ったく…大丈夫か?」
私が悪いはずなのに、私の身を案じる葉月。なんて優しいんだろうか。
――ありがとう、葉月。
私は心の中で葉月に感謝する。
「うん…葉月も、大丈夫…?」
「えっ?俺?あぁ、頭少し打った位だから大丈夫だよ。」
――そんな訳ない… あれだけ強く頭を打ったんだ、無事に済むわけがない…
それは分かっている。
でも、せっかく葉月が気を使ってくれているんだ。 今はそのご好意に甘えよう。
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