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「嫌ぁぁぁあ…!」
――バサ――
断末魔のような叫び声をあげながら、私は勢いよく飛び起きた。
「ハァ…… ハァ……」
――なにあの夢…?
妙に鮮明で生々しかった。
先ほどの夢を思いだし、恐怖でその身を震わせる。
なんて最悪の目覚め……
――それにしても凄い汗だ…
こんなんじゃあ、学校に行けないな…
そう思った私はベッドから起き上がり、タンスから衣類を取り出して、浴室へと向かった。
そして、浴室で軽く体を流し、続いてリビングへと向かう。
「あら、紫苑、おはよう。」
「おはよう」
リビングに着いた私を明るい笑顔で出迎えたのはキッチンに向かおうとしていた、母の〔チサト〕だ。
エプロンを着ている所を見る限り、おそらく朝食を作ろうとしていたのだろう。
母は長い黒髪に落ち着いた顔立ちをしていて、娘の私から見ても、とても綺麗な人だ。
私には、母ともう一人中学年の加恵理という妹がいる。
父は私が物心付く前に亡くなったそうだ…
「顔、蒼いわよ?大丈夫?」
どうやら私の顔色はそうとう悪いらしい。
まあ、あんな夢を見たんだ、当たり前といえば当たり前か…
それにしても、流石は母親といったところか。我が子の変化には敏感だ。
母に心配をかけたくない私は、必死に偽りの笑顔を作りだし、一言、「ありがとう」と呟く。
「……ご飯でも食べましょうか。」
私が無理をしているのに気づき、気を使ってくれているのだろか。母はあまり深入りしようとはせず、ただ静かにそう呟いて、キッチンへと姿を消した。
そんな母を追いかけるように私もキッチンへ向かう。
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