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キッチンに入り、黙って母の横に立ち、朝食の支度を手伝う。
始めは、私達の為に昼から夜まで働いて、更には家事まで立派にこなす。そんな母の負担を少しでも、軽くしようと始めたのが、これだったのだが、今ではすっかり私の日課だ。
――朝食の支度を始めて数十分、手際よく朝食を作り終えた母と私は、出来上がったそれと三人分の食器をテーブルに並べ、そろそろ起きてくるであろう妹を、椅子に座って待つことに。
――トタッ、トタッ、トタッ――
待つこと二分、誰かが階段をかけ降りてくる。
きっと加恵理だろう。
「おはよう…」
案の定、階段から姿を現したのは加恵理だ。朝に弱い加恵理はまだ眠そうに目を擦っている。
「おはよう、加恵理。」
「あ、お姉ちゃんだ!」
「ちょっ、加恵理!?危な……!」
先程まで眠たそうにしていた、加恵理が、私の顔を見るなり、いきなり抱きついてきて、思わず倒れそうになったが、なんとか踏ん張り、それを死守する。
「もう、危ないよ。」
そんな事を言いながらも、加恵理のその長い黒髪に纏われた頭を撫でる私は俗に言う、シスコンというやつなのだろう。
「えへへ~」
幸せそうな表情を浮かべて私に頭を撫でられる加恵理は、まるで猫のように愛らしくて――そんな加恵理に沈んでいた私の心は癒されて、今では天にも登る気分。
こんな子が私の妹で本当に良かった…
神様がいるなら全身全霊でお礼を言いたい。
私が頭を撫でる事に夢中になっていると、不意に母が口を開く。
「紫苑、早くしないと遅れるわよ! 加恵理も早く食べないと!」
えっ!?
もうそんな時間!?
私は慌てて時計に視線を移す。
時刻はもう7時30分。
どうやら私と加恵理が戯れている間にかなりの時間が経ってしまったらしい。
――まずい、学校に遅れる…!
焦った私は次々と料理を口に運んでいく。
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