序章

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透き通るような肌、長く細い眉、淡く美しい唇、そして艶やかな漆黒のロングヘアー。一つ一つが芸術と言ってもいいほど、彼女の容姿は整っていた。 「……………」 連夜は彼女に見入っていた。だらしなく口をポカンと開け、呆けている。 いや、この場合は見惚れていたと言った方が正しいだろう。美し過ぎる存在に心奪われてしまったのだ。 不意に、彼女の閉じられていた双眸が開らかれた。間近で見ていた連夜と目が合い、僅かな沈黙が流れる。 「お……おはよう?」 突然の出来事に疑問形で「おはよう」と言ってしまった…。大体おはようってなんだよ! 今はもう18時だろうが!! 心の中で「おはよう」と言ったあの時の自分を激しく責めたてた。 彼女はそんな俺の事をじぃーーっと見ていた。その何者でも汚されぬサファイヤの眼が俺を見つめて離さない。 「うっ……」 その視線に連夜は呻き、目を逸らす。女性にコレだけ見つめられれば誰でも目を逸らすだろう。 ましてや彼女は美人だ。擦れ違えば100人中100人は絶対に振り返る。 「…容姿、音声、骨格、指紋、虹彩、全て一致。システムは全てオールグリーン、これより作業を開始します」 機械的な喋り方をすると彼女は大きい箱から一歩足を踏み出す。それだけでかなり至近距離になり、傍から見ればキスしている様にでも見えるだろう。 「初めまして桜木 連夜様。私は最新型ガイノイドのミルフィと申します。連夜様の護衛の為、参上致しました」 彼女はお辞儀をすると嫣然と微笑んだ。笑顔は天使の微笑みの様に美しかったが何故だが反乱の予感がした。
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