日常

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日常

何時も通りの朝、何時も通りに学校に登校し、何時も通りに帰宅する。 予め組まれていたかの様な日常を今日も普通に熟す。 夕焼け空には幾つもの雲が流れ、連れなり、日の光によって点々と色を付けていた。 茜色に染まる空を見上げながら、今日も学校と言う教育機関から解放された体を天へと伸ばし、息を深く吐く。 何時になっても学校からの解放感はいいものだ。やっと退屈な時間が終わったからな。 軽くなった両足を地に付け、自宅へと足を向けた。 帰ったら何をしようか。 ゲーム、読書、仮眠や運動、新しい料理にチャレンジするのもいい。 あれこれと考えながら歩調を速め、肩に掛けたバッグを背負い直す。 桜木 連夜(さくらぎ れんや)は軽くスキップしながら家への道程を急いだ。 雨風に晒されながら如何なる危険からも自分を守ってくれる我が家を見上げる。 この家で生まれ過し、成長した俺はもう18歳になった。 連夜にとっては唯一安心出来る場所で、帰るべき居場所。 そんな自分の家は物だけど、母親の居ない連夜には常に見守ってくれる母さんに近い存在だ。 視線を上から中心に戻すと、足を進める。 インターホンの横にある薄く四角い半透明の画面に掌を合わせる。 途端に「ピッ」と音が響き、半透明の画面を細い線が上下左右を何度も往復した。 『認証終了。連夜様、お帰りなさいませ』 機械的な女性の声が漏れると、何重にもロックされた扉が僅かに開き、施錠が解除された事を示した。 ドアノブに手を掛け、開け放つ。 「ただいまー」 返事が返ってこないのを知りつつ、言葉を出す。 これし誰かに向けて言った言葉ではない。自分の家に向けたものだ。 家に対して「ただいま」と言うのは少しばかり変だろうか? それでももう恒例行事みたいに当たり前になっている為、今更変える気はなかった。
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