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「俺の銀だろ、何でお前達の社蓄になってんだよ。そういうのは発見次第、被害者に返すのが普通だろう」
「言ったであろう、投資して買い集め直したと。投資した金は我々の予算と運営資金から出されたのじゃ、社蓄として確保していると言い訳するしか御上も納得してくれん。群の字に返す事は出来んのじゃよ」
溜め息漏らしながら言うその言葉には苦労が滲(にじ)み出ていて、御上という世界政府もしくは裏世界を牛耳る断罪者のどちらかとの対応に、悪戦苦闘したんだなと感じた。
でも、だからと言って諦め切れる訳がない。社蓄にされたとはいえ、そもそも。
「俺から銀盗んで市場に流した奴の所に売り金くらいあったんだろ。それを元手に買い直したら投資金だって掛かってねぇんだろう? んならまるまる儲けじゃねぇかよ、この盗人組織」
「戯け。盗んだ銀を買う企業と、市場から買う我々の銀の値段は違う。それもかなりの差でな。確かに売り金を当てにしたが、あいつ等足元見られやがって全然足りておらんかったんじゃ。でなければ、組織を傾ける程の金を費やしていないぞ」
……本当にご苦労な事で。どれだけの反対を押し返し、市場の為にやり通してやったんだろうな。なら俺のだからと自由に使わせろと言うのは、幾ら何でも可哀想である。
とはいえこちらも死活問題な訳で、その無理は通してもらわんとな。
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