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彼女は、俺と変わらないくらい髪が短くて、遠目から見ても肩幅も足腰もしっかりしているのがわかった。
彼女は前だけを見つめてどんどん走る。長距離にしては速いペースだけど、スピードは全く落ちる気配がない。
普段他人に興味を持つことがあまりない俺が、彼女の見る景色はどんなものか、何を目指しているのかを無償に知りたいと思った。
そして、がむしゃらに走っているその姿は、驚くほど春の爽やかな朝の空が似合っていて―…
ドクン…
一瞬、心臓が止まったような気がした。彼女が眩しすぎて、突然泣きたいような衝動に駈られた。
感動するって、こういうことかな…
冷たいと言われた俺の心が、あっさりと開いた瞬間だった。
何部かも何年生かもわからない彼女が目に焼き付いて離れなくなってしまった俺は、その日の朝練は必死でやった。
彼女に負けないように、置いていかれないように。
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