27人が本棚に入れています
本棚に追加
「お~い、えっと…遥、だっけ?一緒に上まで行かねぇか?」
朝練が終わり、制服に着替え、部室を出ようとしたところで誰かに呼び止められた。
上、というのは3階にある教室のことだろう。
「ああ。」
俺は短く返事をした。
何で俺の名前を知っているのかはわからなかったが、興味が沸かなかったから、聞かなかった。
「俺さ、米倉 明(ヨネクラ アキラ)。よろしくな。」
明は眩しい笑顔で話しかけてくる。既に知ってるみたいだったが、明とは対照的に俺は、
「加藤 遥(カトウ ハルカ)。」
大嫌いな自分の名前を冷たく言い放った。
俺がそっけない態度をとったにも関わらず、明は嬉しそうに頷き、俺の隣に並んだ。
そんな明るく、少し強引な性格のおかげで、俺がこいつと打ち解けるのに全く時間は必要なかった。
自分の名前が嫌いだと伝えたが、苗字で呼ぶのは距離があるようで嫌だと明は言い張り、最終的に――
「ハル!…うん、しっくりきた!いいよな?」
「…勝手にしろ。」
明が勝手に決め、あまりにも嬉しいそうにするから、俺は拒否することなんてできなかった。
けれど、別に嫌ではなかったし、むしろ少し懐かしい気持ちになって明と一緒に笑っていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!