春、ハル。

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「お~い、えっと…遥、だっけ?一緒に上まで行かねぇか?」 朝練が終わり、制服に着替え、部室を出ようとしたところで誰かに呼び止められた。 上、というのは3階にある教室のことだろう。 「ああ。」 俺は短く返事をした。 何で俺の名前を知っているのかはわからなかったが、興味が沸かなかったから、聞かなかった。 「俺さ、米倉 明(ヨネクラ アキラ)。よろしくな。」 明は眩しい笑顔で話しかけてくる。既に知ってるみたいだったが、明とは対照的に俺は、 「加藤 遥(カトウ ハルカ)。」 大嫌いな自分の名前を冷たく言い放った。 俺がそっけない態度をとったにも関わらず、明は嬉しそうに頷き、俺の隣に並んだ。 そんな明るく、少し強引な性格のおかげで、俺がこいつと打ち解けるのに全く時間は必要なかった。 自分の名前が嫌いだと伝えたが、苗字で呼ぶのは距離があるようで嫌だと明は言い張り、最終的に―― 「ハル!…うん、しっくりきた!いいよな?」 「…勝手にしろ。」 明が勝手に決め、あまりにも嬉しいそうにするから、俺は拒否することなんてできなかった。 けれど、別に嫌ではなかったし、むしろ少し懐かしい気持ちになって明と一緒に笑っていた。 .
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