春、ハル。

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1時間目が始まり自己紹介が始まる。だんだん自分の番が近づくにつれて、自然と眉間にシワが寄る。 自分の番になると、ふぅとため息をつき、教壇に立つ。周囲がざわついた。 その瞬間―…時が止まったような、無音の世界に陥った。 1番前の席だから、教室を見渡したことがなかったから……気付かなかった。 予想外の人物がいたのだ。 一瞬、蘇る。 朝の、グラウンドで見たあの女の子がいた… 嘘だろ? すっかり先輩だと思っていた俺は、かなり動揺した。 それと同時に名前を言いたくないという気持ちが倍増する。 しかし、ここはポーカーフェイスで誤魔化す。わざと無表情で淡々と話した。 「加藤 遥です。バスケ部所属。よろしく」 名前を言った瞬間、さっきよりもさらに周囲がざわめくのを感じた。 男子のからかうような声。女子のがっかりしたような言葉。 あぁ…だから嫌なんだよ―― .
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