彼の心

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ここはイーグルランドの小さな田舎町、オネット。 自然が多く、喉かで静かな町並みは、今も変わってはいない。 そのオネットに、たった一つだけある中学校。 三年生の教室の中に、一人の少年がいた。 帰る前のホームルーム中、少年はお気に入りの帽子を人差し指で回しながら、校庭を眺めていた。 「今日渡した進路希望の用紙は、来月が締め切りだからな。しっかりと考えて、提出するように。 では、今日はこれまで」 ガタガタと皆が席を立つ音が教室中を包んだ。 各々が帰宅していく中で、少年だけは、席を立たずに校庭を眺め続けていた。 「進路、かぁ」 ポツリ――と、彼の口から言葉が漏れた。 進路なんて、漠然とも見えて来ない。いくら考えても、自分のやりたいことが見つからない。 「……ネス」 担任の先生が、少年の名を呼びながら近づいて来た。 「進路のことで、何か悩んでいるのか? 先生で良いなら、相談に乗るが?」 優しい言葉だが、ネスの心には届かない。 溜め息をついて首を横に振った。 「別に、いいですよ。何も悩んでる訳じゃないですし」 ぶっきらぼうに言うと、先生は困ったような表情を作った後、適当な挨拶をして職員室へ戻って行った。 「進路なんて、特にやりたいことも無いしなぁ」 ガタッと席を立ち、鞄を肩に下げて教室を後にする。 校庭を出て、見慣れたオネットの町並みを見ながら、ゆっくりとした足取りで、帰路を歩き続ける。 実はこのネスという少年。一見思春期の何でもない普通の少年に見えるが、実は並々ならぬ経歴がある。 今から約二年前。ネスは、三人の仲間達と共に、この地球の危機を救ったのだ。 苦しくも充実した旅をして、凄まじい戦いを幾つも潜り抜けて、ネスはついに地球を守り切ったのだ。 しかし、そんな経歴は、今この世の中の流れには、何の役にも立たない。 今のネスに残っているのは、地球を救ったという小さな誇りと、心にポッカリと空いた大きな穴だった。 他の仲間達は、皆各々の道へと進み始めている。 ポーラは保育士を目指して勉強に励み。 ジェフは飛び級で大学に進み、現在首席で最終学年を迎え。 プーは立派に一国の王をこなしている。 ネスは空を見上げて、小さく溜め息をついた。 「……僕は、何やってるのかな」
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