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フラフラと歩きながら、ネスは帰路の途中にあるハンバーガーショップ、ニコニコバーガーへ立ち寄ることにした。
ネスが生まれてすぐに出来たオネットの支店だ。
入り口へ近づくと、ネスの存在を探知した自動ドアが、ゆっくりと左右へ開いた。
中からは、学校帰りの学生で賑わう声と、ハンバーガーやポテトなどの油っぽい香りがやって来て、瞬く間にネスを包んだ。
「いらっしゃいませー!」
店の名前に恥じないくらいのニコニコ笑顔で、カウンターに立つ店員が迎えてくれた。
適当にハンバーガーのセットを注文したネスは、それを持って空いている席に腰を下ろした。
「はぁ」
何気なく漏れたため息。それに敏感に反応した男が、ネスに近づいて来た。
「ようネス。どした? そんな悩める思春期みたいな面して」
長い金髪にサングラス。ニコニコバーガーの名前に一ミリもかすらない容姿をした店長、フランクがネスの対面に腰掛けた。
「悩める思春期なんですよーだ。て言うか、いいの? 店長が仕事サボって客と話してて」
「良いんだよ。仕事なんてバイトにやらしとけば。俺はそれを管理するだけ」
「あっそ」
ニヤリと笑って言ったフランクに対して、素っ気ない返事を返すネス。ポテトを一つ掴み、口に入れた。
「おいおいマジで元気ねーな。お前らしくねぇ。さては、愛しの彼女にフラれたな?」
ブフッ、とネスは口に含んでいたコーラを吹き出した。
「ゲホッ、ゲホッ、な、何言ってんのさ! 大体まだ……僕と…………は……女じ……なぃ」
苦しそうに咳き込んだかと思ったら、今度は赤くなって俯いた。
「あぁ? なんだお前、まだくっついてねーのか!? 冗談だろ!」
「う、うるさいな!」
ゆでダコのような顔でそう言うと、ネスはハンバーガーをガツガツと口の中に詰め込んだ。
話を振ったフランクはフランクで、マジかよ……。といった本気反応でネスを見ている。
ネスとそのかつての仲間、ポーラは、周りから見ればカップルと思われても仕方がない仲良しだ。
しかし、お互いに後一歩が踏み出せず、今日も微妙な関係が続いている。
それもそうだが、今のネスを悩ませているのは、やはりこの先の問題だ。
将来どうするのか。どんな学校に進学するのか。或いはどんな職につくのか。
周りがそんな空気になる中で、ネスだけが、やりたいことを見つけられずにいた。
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