彼の心

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「なるほどな。将来の悩みって訳か」 ネスが悩んでいる理由を聞いたフランクは、数回頷きながら、そう言った。 「うん。皆は、将来の目標に向かって頑張ってるのに、僕は何がしたいのかも分からないんだ」 悩ましげに言ってコーラを一口含むネス。 「まぁお前、それはしょうがねぇんじゃねぇか?」 「しょうがない?」 「あぁ、将来なんてのを今すぐ決めろって方が無理な話だ。 自分が何がしたいかなんて、早々分かるもんじゃねぇ。ひょっとすると、何十年も経った後に、見つかるかも知れねぇ」 つまりな、とフランクは言ってネスのコーラを勝手に飲んだ。 「焦るこたぁねぇんだ。焦って強引に決めた将来なんて、大したもんじゃねえ」 「…………」 そう言われ、ネスは顔をしかめて俯いた。 「……分からないよ、僕には」 そう言うと、鞄を手に持ち席を立つと、そのままニコニコバーガーを後にした。 その背中を見送った後、フランクは少し笑うと、 「いいじゃねえか、悩ましげな思春期」 オネットの市街地を抜けると、野生の生き物達があちこちに生息している自然豊かな森山が広がっている。 その中を歩きながら、ネスはやはり悩ましげな表情をしていた。 かつてはギーグによる影響で、凶暴化していた動物達も、今ではとても大人しくなり、襲って来るようなことは無くなった。 しばらく進んで行くと、小さな一軒家が見えてくる。 その一軒家こそ、ネスが15年間育ってきた家だ。 お洒落な玄関の扉を開けて、中へ入る。そこには、全く変わらない我が家の風景があった。 「ただいまー」 気の抜けた帰りを知らせる挨拶をすると、その足で二階への階段に向かって歩いていく。 その途中、キッチンから声が聞こえて来た。 「あらネス。おかえりなさい」 そう声をかけたのは、ネスのママだ。丁度料理をしていたらしく、キッチンからは美味しそうなハンバーグの香りが漂ってくる。 「ただいま、ママ」 微笑みを浮かべてそれだけ言うと、ネスはママから目を離し、そのまま階段を登った。 二階には、二つの部屋がある。 真っ直ぐ歩いた突き当たりが、ネスの部屋。その途中の左側扉が、妹であるトレーシーの部屋だ。 因みにトレーシーはまだ帰っていない。今日もまた、エスカルゴ運送で働いているのだろう。
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