彼の心

6/11
前へ
/19ページ
次へ
ピピピッ、ピピピッ、という電子音が、ネスの鼓膜を揺らした。 「ん……」 ベッドの上で目蓋を開いたネスは、今の状況について考えてみる。 (そっか、昨日あのまま寝ちゃったのか……) と考えてハッとする。 「やばっ、遅刻っ……」 と言って、また踏み止まる。 「って、今日は土曜日か」 そう気づいて足を止め、ゆっくりとした動作でベッドに戻る。 そこに座って時間を見ると、午前9時。 12時間は寝たか。と、自分に呆れながらも、スリッパを履いて部屋を出た。 ぼぉっとしたまま廊下を歩いていると、一階から何やら談笑する声が聞こえた。 お客さんだろうか? 声からして女性だが。こんな時間にこんな山中に? 疑問を抱きながらも下へ降りると、そこには思いもよらない顔があった。 「あ、おはよう、ネス」 ニコッと笑ってそう言ったのは、かつてネスと共に旅をした少女だった。 白いワンピースの上にベージュのカーディガンという格好に身を包み。 相変わらずミスコンで優勝出来そうな顔は、うっすらと化粧がされていて大人っぽい。 彼女の名前はポーラ。一番最初に仲間になり、最後まで一緒にいてくれた少女だ。 「おはようって……どうしたの急に!?」 「ん? 久しぶりに予定も空いたし、会いに来ようかと思って」 「会いに来るって、それなら前もって電話とか」 「したわよ? でもネス寝てたみたいだし、おばさんに許可頂いて来てるの。ね、おばさん」 うんうん、と満足そうに頷くママ。ネスは大いにテンパった。 何せ、格好は昨日と同じだし、寝癖で髪はボサボサだし、シャワーも何も浴びてないし……。 ネスは神速のごときスピードでUターンし、シャワーを浴びて着替えて、再び一階にやって来た。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加