第一話『イレギュラーメフ』

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シャワーを浴びた後、グラハムは私服を着た。 「俺の私服と言えば…これしかないな」 少し崩れたスーツ。 白いワイシャツと黒い服。 まるでホストだった。 その姿はグラハムの容姿と相成って相当な雰囲気をかもし出す。 元々ナルシストの気がある彼にとっては、この服は言わば最高の服。 「さすが俺だ」 そう言った直後、家のインターホンがなった。 不信に思う。 自分にそんな友人や幼馴染や恋人は居ない。 「幼馴染ほしいな」 もう一度言う。居ない。 玄関に向かっていって扉を開く。 その前にいる人物も見ずに彼は言い放つ。 「悪いけど、ホストとアイドルの勧誘以外は受けてない」 「本気で殴るぞ」 「すまん」 そこに居たのは麗音。 ジト目でグラハムを睨んでいた。 しかし、一切の反省を見せないグラハム。 「麗音じゃないか、俺に惚れて来たのか?」 麗音の額に青筋が浮かぶ。 イライラしているのは目に見えるが、なんの妥協も無い。 「黙って…私服に…着替えろっ」 拳をフルフルと震わせている。 「これが私服だ…麗音よ、俺が着てるせいでさらにカッコいい服に見えるだろ?」 「まともな服があるだろっ!このナルシストめっ!!」 拳が、グラハムに直撃するかに思われた。 しかし、身を翻して華麗に避けると、謎の決めポーズをとった。 「荒ぶる鷹のポーズ!」 「なんだ、それは?」 そう質問した麗音の顔は、前髪で隠れて見えない。 「ググれ!」 「遺言はそれだけだな、じゃあお終いだ」 その直後、グラハムの腹に彼女の拳が直撃する。 鈍い音と共に、彼の叫び声が聞こえた。
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