第一話『イレギュラーメフ』

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グラハムが麗音と共に車に乗っている。 服は普通の長袖シャツとジーンズ。上にパーカーを羽織っている。 ちなみに彼の顔面は真っ青である。 あの後何度もふざけて十数回殴られている。 傷が元々ある場所だ。そうもなるだろう。 「お、俺を殺す気だな…」 「衝動的な殺意は湧いたということは認めよう」 「おっ…まえという奴はぁ」 「教師相手になんて言葉遣いだろうな?」 麗音は拳に息をふきかけている。 その行動一つで、グラハムは大人しくなる。 「大人しくしていろ…わざわざ怪我をしているからと思って迎えに行ってやったんだから」 「さすが、俺に惚れたな…」 「ふんっ!」 横に振られる拳。 シートベルトで拘束されたグラハムの腹部に直撃する。 「ぐぉぉぉっ!」 再び悶える。 「い、いつかはこれが快感になる日が」 「こんでいい!!」 怒るように言って、麗音は車を走らせる。 そして、車は学校の校門をくぐって駐車場へとたどりつく。 「さっさと降りろ」 そう言って麗音はすばやく降りた。 腹部を押さえながらも、グラハムが降りる。 「こ、こりゃ手厳しいな…」 なんとか降りてドアを閉める。 麗音がキーのボタンを押して車の鍵をしめると、グラハムの体を支える。 「余計なことは絶対するなよ!」 咎めるようにそういう。 頷くグラハム。 「さて、歩くか」 グラハムの腕を首に回して、麗音は歩きだす。 二人の力差で言うなら、麗音の方がグラハムより力が強いかもしれない。 「あえて言おう…メフとは驚愕的だな」 そう言うと、麗音が困ったような顔をする。 力が強いと言いたいのだと理解した。 「たまに、お前のキャラがわからなくなる」 「まぁ、俺もわからない」 そう言って笑う。 その顔を見て、麗音も微笑む。 「まったく、お前とい…う?」 首に回したグラハムの腕が、自分の胸を触っていた。 いや、それだけなら触れてしまったで良いだろう。 まだ許せる。 ただ、コイツ、揉んでいる。 「むむっ…これは中々…おそらくトップとアンダーの差は25cmかそれ以上か、つまり――」 「お前という奴はぁぁぁぁっ!!」 背負い投げの用量で投げ飛ばす。 グラハムの体は開いた窓(2階)へと投げ飛ばされた。 「はぁ…はぁ…きょ、教室まで送ってやったぞ」 疲れたように、麗音は肩で息をしていた。 彼の相手は、メフにも辛いようだ。
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