第一話『イレギュラーメフ』

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前日と同じ午後7時頃。 彼は学校を出て歩いていた。 麗音は送ってくれると言ったのだが、彼は断り一人で帰ることにした。 「ふぅ、女を連れてじゃ買い物にも行けないからな」 もちろんやましいものを買うからだ。 「さ~て、今日はどうすっか…」 その瞬間、服の裾が誰かに引っ張られた。 背後からだ。 振り返る。 だが、そこには誰も居ない。 ぞっとした。 「こっちだよ」 声がした。下からだ。 ふいに下を見てみると、そこには10歳ほどの少女。 可愛らしい青髪の少女だ。 グラハムはしゃがんで、少女と目線を合わせた。 「どうした子猫ちゃん…俺とそういう関係になりたいってのはわからんでもないが…子猫ちゃんにはまだ早いな」 そう言って少女を離れさそうとするが、首を横に振る少女。 それに疑問を持つグラハム。 「早くない…貴方は、私と一緒になりたいはず」 そういう少女。 ちなみに、ここは大通り。 この時間帯は人通りが激しい。 その全ての人が、グラハムと少女をギョッとした目で見た。 「なっ!?」 グラハムも同時にギョッとする。 辺りを見回す。 今にも通報されそうな勢いだ。 「ちょっ、ちょっと待て子猫ちゃん…俺は罪な男だというのはわかる、だけどな…子猫ちゃんがもっと大きくなってからそういうことは言うんだ…OK?」 必死に少女と離れるために口実をつくる。 しかし、少女は裾を掴んだままだ。 「……オーライわかった、だが裾は離してくれ」 そう言うと、大人しく裾を外す少女。 グラハムは立ち上がって少女をじっくりと 見つめた。 「案外可愛いじゃないか…さて」 少女の手をとる。 無表情のままの少女。 その少女を見てペースを崩されたのか、後頭部をかいて困ったような顔をした。 「とりあえず…家まで送っていこう」 「無い」 そして、さらに困ったのか片手で頭を押さえる。 段々と頭痛がしてきた。 「……随分な子猫ちゃんだ」 「人が居ない広い場所、ある?」 少女の言葉。 本格的に恐ろしくなってきた。 だが、この少女に付き合うのも悪くない。 「暇だし」 そう言って歩きだす。 少女の所望する場所に案内するためだ。
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