第一話『イレギュラーメフ』

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彼は、少女と共に公園へとやってきた。 この時間帯、人はまるっきりいない公園。 「ほれ、で…ここでどうしたいんだい?」 「私と、一つになるの」 少女が言う。 思わず咽かえるグラハム。 「ゲホッ!エホッ!じょ、嬢ちゃん…さすがにそれはまずいぜ」 「エンゲージが必要なの」 「結婚もまだ早い、お互いの名前も知らないだろう…そして、PTAが飛んでくるぞ、俺の存在を規制しにかかるわ!」 少し脅すように言ってみた。 それで、少女が逃げ出すと思ったがそうは行かなかった。 まったく臆せず少女は、グラハムを見つめる。 「私、名護魅(なごみ)」 なるほど、と頷いて後頭部を掻く。 困り果てた結果、言う。 「苗字は?」 「無いの…与えられてない」 もうこの電波少女をどう回避しようかと考えたが、諦める事にした。 そして名乗る。 「松岡グラハムだ」 「…変な名前」 「うるせぇ子猫ちゃん」 「名護魅だよ?」 深い。それは深い溜息を吐いた。 頷く。何度も頷いた。 「あぁ、名護魅ちゃん…そろそろ帰らないのか?」 「早く一つになろう?」 もう一種のホラーと考えることにしたグラハム。 そして、名護魅の頭を撫でてからなだめるように言う。 「とりあえず、ダメだ…名護魅ちゃんを家に送っていく、一つになるとかそんなの」 その瞬間、背筋がゾッとした。 名護魅がグラハムの頬を撫でる。 「遅かったよ…グラハム」 少女が頬から手を離して、グラハムの背後を指差した。 振り向く。 そこには一人の男が居た。
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