第一話『イレギュラーメフ』

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得意の運動神経ですばやく近づいて、足を横から振る。 その蹴りの足は、グラハムの頭より上にある胸部を蹴る。 鳩尾に入ったはずだった。 「ノーマル相手じゃねぇからなぁ~」 苦笑する。 筋肉で蹴りが入った感覚がまったくしなかった。 「ノゥっ!!」 男の大きな拳がグラハムの体の中央に直撃した。 それと共に宙に浮くグラハムの体。 地面を転がる。 だが、瞬時に起き上がった。 口から血が出ている。 「ヒュゥ…痛い痛い…さて、まだまだ」 そう言って走り出す。 近づく。男が拳を放つ。 グラハムはそれを跳んで避けると、その拳を踏み台にさらに跳ぶ。 「シュートッ!!」 蹴りを顔面にぶつける。 真正面からぶつけたはずなのに、鼻一つ折れたような手ごたえも感じない。 「だめだなっ」 一度地面に落ちる。 だが、身動きが取れない空中で、男の拳を受けた。 斜め上からの拳で、吹き飛んで地上にぶつかってから一度バウンドして地面を転がった。 服や髪は汚れている。 「っ…だぁっ、痛いなぁッ!!」 その瞬間、背後から名護魅がかけよってきた。 グラハムの肩を掴む。 「だめ、貴方がノーマルだったなんて…メフじゃなきゃメフには勝てないよ、わかってるでしょ?」 そう言われながらも、彼は立ち上がって男を見る。 そして名護魅を後ろに下がらせる。 「そんな道理、俺の無理でこじあける!!」 そう言って、彼は走り出した。 時に熱い男。松岡グラハム。 その男の心に今、なにがあるのかは詮索する必要もないだろう。
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