第一話『イレギュラーメフ』

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走り出すグラハム。 男の腕が横に振られた。 だが、そんな大振りな攻撃、グラハムは当たらない。 地面を転がって回避して、跳ぶ。 空中にいるグラハム。 「学習が無いな!」 「あるんだよそれが!」 グラハムが手を振る。 その瞬間、その手に握られた砂が男の顔に勢い良く飛び散った。 「ぐぅおっ!目がぁぁっ!!」 男が目を押さえた。 反射的だろう。 だが、そのチャンスを決して見逃さなかった。 「グラハムキック!!」 ラ○ダーキック的なポーズで放ったそれは、男の顔面に直撃した。 砂と相まって、先ほどよりも強力な蹴りを顔面に直撃して、男は倒れる。 グラハムは体制を崩しかけながらも着地する。 「うぉぉっと…体が」 ふらついて、グラハムも膝をつく。 こんな真面目に『喧嘩』したのは数年ぶりだ。 「さて、名護魅ちゃん」 振り返って、彼女のもとへと歩き出す。 たしょう千鳥足になっているが、グラハムは名護魅の元へと歩いて向かっている。 名護魅の口が動いた。 危ない。と―― 「っバカ…」 振り向いた時、そこには男が拳を振りかぶった体勢でいた。 グラハムが苦笑する。 「大声で言っ!?」 言葉の最中に、殴られる。 宙をまって、べちゃっと落ちた。 「痛っ…あぁっ、バカが…」 肩で息をする。 体の感覚がなくなってくる。 そのグラハムに、名護魅が近づいて、しゃがむ。 「私と一つになる?」 「っ…こんなことならそうしとけば良かったぜ」 グラハムは悪態をつく。 名護魅が、僅かに微笑んだ。 初めて見る表情。だが、そこらへんの少女とは違う何かがあった。 「じゃあ、一つになろう」 その言葉と共に、名護魅の唇とグラハムの唇が重なった。
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