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彼、松岡グラハムは女教師の言い付け通り理科実験室へとやって来た。
ノックもせず教室へと入った。
「ども~」
教室に入ると、そこには先ほどの女教師がいた。
机の上で実験器具をならべてなにかしているようだった。
「あぁ、今コーヒーを作ってる」
フラスコの中で作られたそれを見ている。
その姿を見たグラハムは呆れ半分、椅子を出して座る。
女教師も椅子をグラハムの隣りに配置して座る。
「なんだ麗音…俺が素敵すぎたか」
グラハムが呼び捨てにした。
女教師こと<澪火 麗音>(れいか うるね)はグラハムをにらみつける。
「先生だろ…後、お前が素敵な要素が見えない」
「酷いじゃないか」
そう言って、グラハムが麗音を見る。
特に表情を変えていない麗音。
「メフと人間の溝は埋まらんな」
そう言ってコーヒーを見る麗音。
立ち上がって、コーヒーをビーカーに淹れる。
二つのビーカーを持って、もう一度座ると、片方をグラハムに渡す。
グラハムは机の上にあるミルクを取って、コーヒーに入れる。
「まぁ、そんな溝は今だけだ」
コーヒーの黒に、ミルクの白が入る。
二つの色が回転している。
「すぐにこの世界はメフだけの世界になるさな」
コーヒーが混ざっていく。
二色が混ざって白でも黒でもない色になる。
「っと、こんな真面目な話しは柄じゃない」
そう言って笑うと、ビーカーのコーヒーを一口飲む。
麗音はそのグラハムを驚いた様子で見た。
「お前が真面目なことを言うなんて少しおかしいな」
その言葉で、グラハムが目を伏せて笑う。
「それは挑発か麗音」
「教師が生徒を挑発なんかしないぞ」
そう言って立ち上がると、コーヒーを持って机の上に座る。
顔をしかめるグラハム。
「教師が机の上に座るのはどうかと思うね、ボカァ」
「良いのさ…誰も見てないからな…見てるのは頭の悪い馬鹿だけだ」
「気を許されているのか、それとも…俺は馬鹿にされているのか?」
「さぁな」
麗音は、不貞腐れているグラハムを見て笑った。
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