プロローグ『2015』

6/10
前へ
/135ページ
次へ
日も落ち、しばらくしてグラハムは校舎を出た。 午後7時の街は案外明るかった。 夜の宵闇よりも、街灯のほうが輝くし店の電光掲示板のほうが綺麗だ。 だけど、その光のせいかもちろん影だってある。 「ちょっとこっちだな」 突然背後から声をかけられて、三人の男たちに路地裏につれていかれた。 「なんだなんだ、俺の美貌は男すらオトすのか?」 グラハムは軽くおちゃらけてみるが、男たちはまったく表情を変えない。 「財布だよ、財布!」 「ひでぇな、人がせっかく構ってやってるのに」 そう言った瞬間、グラハムの腹が殴られた。 重い音と共に、グラハムが一瞬浮く。 「ぐっ…おえっ…喉まで、リバースしたぞ?」 「そのまま吐いちまえよ、顔突っ込ませてやるから」 男に言われると、グラハムが男たちを見る。 人数は3人。 財布はなんとかなりそうだ。 「おっとやめとけ、俺たちはメフだ」 殴った男が言う。 絶望的状況。 その状況で、グラハムが笑う。 「これだからメフはって言われるんだな」 「劣等種のてめぇらが言う事じゃねぇだろ」 頬を殴られる。 地面に倒れたグラハム、脳を揺さぶられたように視界がぶれる。 その後、何度も殴る蹴るを繰り返される。 「さて、財布をもらおうか」 男が手を伸ばした瞬間、誰かがその手を掴んだ。 白い、綺麗な手だった。 男は口を開く間もなく、地面を転がった。 「まったく、世話をかけるな」 そこに立っていたのは、見知った顔だった。 先ほどまで一緒にいた女性。 「麗音…じゃん」 「先生だ、馬鹿め」 彼女は、腕を組んで仁王立ちをすると、残り二人の男を睨んだ。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加